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たった1人でソ連を崩壊に追い込んだ男
アメリカ側の勝利で幕を閉じた、
米ソ冷戦。
実は、アメリカの勝利には
たった1人でソ連を崩壊まで追い込んだ、
ある男の謀略が大きく関わっていました…
その男は、レーガンでもなければ、
トルーマンでも、ケネディでもありません。
>その男の正体とは?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
こんにちは、
ダイレクト出版・政経部門の磯村です。
ウクライナ侵攻から2年半が
経過しようとしています。
ウクライナは、8月下旬の時点で
東京23区2つ分の広さのロシア領を
支配しているそう。
今後、
戦況はどのように変化していくのでしょうか?
そこで本日は、
国際関係アナリストの北野幸伯先生に、
「ウクライナ軍の越境攻撃と【 兵站 】」
についてお話しいただきました。
=====
From:北野幸伯
★ウクライナ軍の越境攻撃と【 兵站 】
ダイレクト出版
ルネサンスメルマガ読者の皆様、こんにちは!
北野幸伯です。
久しぶりに、ウクライナ戦争の話です。
2022年2月24日に
プーチンがウクライナ戦争を始める前、
私は二つのことを書いていました。
一つは、
プーチンがウクライナ侵攻を決断する可能性がある。
もう一つは、
プーチンがウクライナ侵攻を決断すれば、
【ウクライナとの戦闘に勝っても負けても】、
ロシアの【 大戦略的敗北 】は【 不可避 】である。
たとえば、
ウクライナ侵攻開始8日前、
2022年2月16日付の『現代ビジネス』は、
『全ロシア将校協会が「プーチン辞任」を要求…!
キエフ制圧でも【 戦略的敗北は避けられない 】』
でした。
@全文はこちら↓
https://gendai.media/articles/-/92504
そして、実際そのとおりになりました。
プーチンはすでに、大戦略的には負けています。
なぜ?
いくつか例を挙げておきましょう。
〇ロシアは国際的に孤立した
2022年3月2日の国連総会で、
ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議案が
賛成多数で採択されました。
この決議案に賛成した国は141か国。
国連加盟国193か国のうち73%は、
はっきりと「ロシアは悪だ!」と非難したのです。
棄権または意思を示さずが、47か国。
これらの国々は、中立です。
この決議案に反対し、
「ロシアの味方であることを示した国」は、
どのくらいいたのでしょうか?
ベラルーシ、北朝鮮、シリア、エリトリアの4か国だけ。
日本には、
中立国家をちゃっかり「ロシア側」に入れて、
「孤立していない」と主張する人たちがいます。
しかし、実際
「俺たちはロシアの味方だ!」と手を挙げた国は、
4か国だけなのです。
日本にも、
「悪いのはアメリカとウクライナだ!ロシアの側につけ!」と
言う人もいます。
日本が、北朝鮮、シリア、ベラルーシと一緒に
ロシアの側につく??????
どれだけ変な主張なのか、
ご理解いただけるでしょう。
〇プーチンは、国際社会で【 戦争犯罪人容疑者 】
2023年3月、国際刑事裁判所(ICC)は、
プーチンに【 逮捕状 】を出しました。
容疑は、プーチンが、
「ウクライナから子供を大量に誘拐させていること」です。
これでプーチンは、
ICC加盟国世界124か国に行くと
逮捕されることになりました。
とはいえ、最近彼は、
ICC加盟国モンゴルを訪問して逮捕されませんでしたが。
しかし、
「国際社会でプーチンが、
オフィシャルに戦争犯罪人容疑者である」
ことに変わりはありません。
〇プーチンは、NATO拡大阻止に失敗した
プーチンがウクライナ侵攻を開始した理由の一つは、
「NATO拡大を阻止するため」でした。
ところが、彼の思惑に反して、
NATOは拡大しました。
それまで、
フィンランドとスウェーデンは中立で、
NATOに入る気が全然なかった。
ところが、ウクライナ侵攻で
「クレイジーなプーチンは、
いつイチャモンをつけて攻め込んでくるかわからない」
と恐怖した。
それで、
両国共にNATO加盟を決めたのです。
フィンランドは2023年4月、
スウェーデンは2024年3月に加盟しました。
プーチンは、
「NATO拡大を阻止するために」
ウクライナ侵攻を決断し、
逆にNATOを拡大させてしまったのです。
これは、
「わかりやすい戦略的敗北」の一つでしょう。
〇ロシアは、「旧ソ連圏の盟主」の地位を失った
ウクライナ戦争が始まる前、
ロシアは、なんやかんや言っても
「旧ソ連圏の盟主」でした。
ところが、ウクライナ侵攻後、
ほとんどの旧ソ連国がロシアから離れる選択をしています。
ウクライナ、モルドバ、ジョージアは
2022年2月、EU加盟申請を行いました。
アルメニアは2024年6月、
ロシアを中心とする軍事同盟CSTOからの
脱退を表明しました。
中央アジアの旧ソ連国
カザフスタン、ウズベキスタン、
トルクメニスタン、タジキスタン、キルギスは、
ロシアを捨てて中国に走っています。
2023年5月、
中国と中央アジア5か国は、
「中国中央アジア運命共同体」を創ることで
合意しました。
こうしてロシアは、
「旧ソ連圏の盟主の地位」を喪失したのです。
〇ロシアは中国の属国に
ウクライナ侵攻前、
ロシアの最大顧客は欧州でした。
しかし、ウクライナ侵攻開始後、
欧州は、ロシア産の天然ガス、原油、石炭の輸入を
大幅に減少させました。
さらに、
ロシアの主要銀行はSWIFTから排除された。
別の言い方をすれば、
ロシアは、「ドル圏」「ユーロ圏」から
追放されたのです。
結果、ロシアは中国に、
天然ガス、原油、石炭を、
【 人民元 】で輸出せざるを得なくなりました。
中国は価格主導権を握り、
安値で買いたたくことも、
ロシアが亡びない程度の値段で買うことも、
自由にできるようになりました。
こうして、
かつてアメリカと世界を二分した
超大国ソ連の後継国家ロシアは、
中国の属国に墜ちたのです。
長くなるので、
この辺でやめておきましょう。
もっと詳細に知りたい方は、拙著
◆『プーチンはすでに、戦略的には負けている』
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▼ウクライナ軍の健闘と失敗
ウクライナが大国ロシアを相手に、
驚くほど健闘していることは、
誰もが知っています。
戦争初期、
首都キーウにむけて進軍してきた
ロシア軍の戦車部隊を、
ドローンやジャベリンで撃退した。
また、ウクライナ軍は、
ドローン、水上ドローンを使い、
ロシア黒海艦隊をクリミアから撤退させることに
成功しています。
『ニューズウィーク』4月15日付。
↓
〈最近撮影された衛星写真によると、
ウクライナのドローンやミサイル、特殊部隊による
定期的な攻撃の圧力に押されてきたロシアの黒海艦隊は、
クリミア半島の主要な海軍基地をほとんど放棄した模様だ。〉
ーー
とはいえ、
ウクライナ軍もいくつか大失敗をしています。
一つは、
反転攻勢の時期を間違えたことです。
アメリカは、
2023年4月に開始するようアドバイスしていました。
しかし、ウクライナ軍は、
「欧米からの武器到着を待って、準備万端で」ということで、
「6月開始」にしたのです。
この二か月で、ロシア軍は、
地雷原をつくったり、塹壕を掘ったり、
戦車の移動を妨げる「ドラゴンの歯」などを設置した。
もう一つは、
反転攻勢のターゲットを分散しすぎたことです。
アメリカは、南に戦力のほとんどを集中させ、
ザポリージャを抜けてクリミアに入るよう
アドバイスしていました。
しかし、ウクライナ軍は、
東、南東、南の3つに軍を分けた。
結果、戦力が分散され、
一つも勝利することができなかったのです。
2023年秋になると、
アメリカ下院で過半数を占める共和党トランプ派によって、
アメリカはウクライナをほとんど支援できなくなりました。
その状態は、
2024年4月までつづいたのです。
この期間にロシア軍は優勢になり、CIAは
「アメリカが支援しなければ、
2024年末までにウクライナ軍は負ける」
と予測しました。
しかし、支援継続が決まったことで、
ウクライナ軍は生き延びることに成功した感じです。
そして、8月6日、
ウクライナ軍はロシア領クルスク州への
進軍を開始しました。
8月末時点で、
100の町村を支配下におさめることに成功したようです。
『AFP=時事』8月28日付。
『ウクライナ軍、ロシア領100町村制圧 約600人を捕虜に』
〈ウクライナ軍の
オレクサンドル・シルスキー(Oleksandr Syrsky)総司令官は、
ロシア西部クルスク(Kursk)州への越境攻撃により、
これまでに100町村、計1294平方キロを制圧したと発表した。〉
──
このことが、
「プーチンに大恥をかかせた」
「プーチンの権威を大いに傷つけた」ことは
間違いありません。
なんといってもプーチンは、
「超短期間で終わる」という意味で、
ウクライナ侵攻を「戦争」と呼ぶことを禁じ、
「特別軍事作戦」と呼ばせているのです。
「ウクライナなんか、ちょろい!」
という意味です。
ところがウクライナ特別軍事作戦は長引き、
すでに2年半が経過した。
ウクライナ軍はクルスク州を占拠し、
モスクワでもドローン攻撃がある。
これ、
「全部プーチンのせい」と言えるでしょう。
なんといっても、
彼が「ウクライナ侵攻」を決断し、
命令したのですから。
今起こっていることは、
全部彼の間違った決断の結果です。
ですが、もう少し現実的に見てみましょう。
ウクライナ軍が越境攻撃を始めた動機は、
いろいろあります。
その一つは、
「ウクライナ東部ドネツク州
(ロシアは2022年9月、一方的に併合を宣言した)の戦場から、
ロシア軍をクルスク州に向けさせたい」
というものです。
というのも、
ドネツク州で戦略的に重要な市ポクロフスクをめぐる戦闘で、
ウクライナ軍が劣勢である。
ウクライナ軍は、
ロシア領クルスク州に進軍することで、
ドネツク州のロシア軍の一部を
クルスク州にむかわせたい。
それによって、
現在の劣勢を挽回したいのです。
ところが、ロシア軍は、
クルスク州を見捨てることにした。
つまり、
「兵力は分散させない。クルスクは気にしない」と。
なぜ?
「ウクライナ軍の罠にははまらない」
ということでしょう。
日本では、ウクライナ軍がロシアに越境攻撃した件で、
だいたい二つの反応が見られます。
一つは、「平和ボケ」な反応。
「ウクライナがやっていることは、
ロシアへの侵略なのではないか?許されるのか?」
こういう人たちは、
「北朝鮮が日本にミサイルを撃ったら、撃ち落とすのはいい。
だが、北朝鮮のミサイル発射台を日本が破壊するのはだめだ!」
とかいうのでしょう。
もう一つは、
「ウクライナ軍すげえ!」「ロシアおわた!」
という反応。
気持ちはわかります。
しかし冷静に考えてみると、
そう楽観的にはなれません。
なぜでしょうか?
ウクライナ軍は現在、
東京23区2つ分の広さのロシア領を支配しているそうです。
ウクライナ軍は、
もっとロシアの深くまで進軍することはできるのでしょうか?
もっと広大な領土を制圧することはできるのでしょうか?
客観的にみると、難しいでしょう。
なぜでしょうか?
もしウクライナが、
もっとロシア領深くまで進軍したり、
もっと広い領土を支配しようとすれば、
それだけ人が必要になります。
クルスク州の人員を増やせば、
ドネツク州の兵士は減り、
ウクライナ軍はますます劣勢になるでしょう。
そして、もっと深く進軍すれば、
【 兵站の問題 】がでてきます。
かつて、フランスの英雄ナポレオンは、
ロシア帝国に戦いを挑むという
人生最大の失敗を犯しました。
老獪なロシア軍のクトゥーゾフ総司令官は、
ひたすら戦いを避け、
ナポレオン軍が飢えること、
凍えることを待ったのです。
60万人の大軍だったナポレオン軍は、
飢え、凍え、フランスに戻れたのは、
1%以下の5000人でした。
この大敗北が、
ナポレオン没落のきっかけになりました。
ヒトラーは1941年6月、
独ソ戦を開始しました。
彼は、
「5カ月でソ連を降伏させることができる」と
楽観視していたようです。
ドイツ軍はモスクワ近郊まで進軍しましたが、
10月になると雪が降り始め、
【 兵站の問題 】がでてきた。
結局、ヒトラーは、ソ連に敗北。
ヒトラーも、ナポレオン同様、
ロシア(ソ連)に敗北し、
没落していったのです。
ナポレオン、ヒトラーとの戦い。
ロシアでは「祖国戦争」「大祖国戦争」と呼ばれ、
重視されています。
ロシア人は、
「外国がロシアを攻めてきても、
広い国土、寒い冬が守ってくれる」と信じている。
実際、広大な領土のロシアに深く攻め込めば、
【 兵站の問題 】が発生し、
負ける可能性が高まります。
だから私は、
ウクライナ軍がロシア領に深入りしないことを
願っているのです。
◆長いPS
ちなみに、日本も、
ナポレオンやナチスドイツを笑えません。
一橋大学の吉田裕名誉教授は、
こう語ります。
〈「年次別の戦死者数を公表している
岩手県のデータなどから推計すると、
軍人・軍属の87.6%は1944年1月以降に
亡くなっていました。
問題はその死に方です。
戦争ですから、
多くの人は戦闘で命を落としたと考えるでしょう。
でも、日本軍は1944年以降、戦病死者が多く、
ある中国の連隊の史料では戦病死者が戦没者に
占める割合は73.5%にもなりました。
実際に全戦没者で見れば、
この数字より多い可能性が高いです。
その戦病死の中身も、
栄養失調による餓死、
あるいは栄養失調の果てに
マラリアに感染というケースが多い。
餓死の比率は61%や37%などの説があり、
確定はしていません。
ですが、
おおむね半数が餓死者だったと言っていいでしょう」〉
(『ヤフーニュース オリジナル特集』2022年7月31日付)
ーー
「おおむね半数が餓死者だった」(!)
日本軍がいかに【 兵站 】を
軽んじていたかわかるでしょう。
私たちは、先の敗戦の理由を知るためにも、
これから同じ過ちを繰り返さないためにも、
戦争の勝敗を決める大きな要因を理解するためにも、
【 兵站 】について知っておく必要があります。
「どうやって???」
元陸相の福山隆先生が、ずばり
◆『兵站』
詳細は↓
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という本を出版されています。
これ一冊で超重要な兵站について、
ばっちり理解できるようになります。
是非ご一読ください。
かなりお勧めです。
PS
北野の新刊、快調に売れ続けています。
◆『プーチンはすでに、戦略的には負けている
~ 戦術的勝利が戦略的敗北に変わるとき 』
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すでに読まれた方は、
アマゾンにレビューを投稿していただけると、
とても助かります。
なにとぞよろしくお願いいたします。
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本日のメルマガはいかがでしたか?
執筆の励みになりますので、
ご意見・ご感想・リクエストがあれば
ぜひこちらより教えてください。
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メルマガの感想はこちら
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<メルマガ著者紹介>
国際関係アナリスト
北野 幸伯
「卒業生の半分は外交官、半分はKGBに」
と言われたエリート大学:
ロシア外務省付属モスクワ国際関係大学を
日本人として初めて卒業。
その後、カルムイキヤ共和国の
大統領顧問に就任。
大国を動かす支配者層の目線から
世界の大局を読むことで、数々の予測を的中。
自身のメルマガは、ロシアに進出する
ほとんどの日系大手企業、金融機関、政府機関の
エリート層から支持されている。
北野 幸伯先生について、もっと知りたい方は、
こちらの紹介ビデオをご覧ください。
↓
パワーゲーム・活動のビジョン
https://youtu.be/Us60-HunT9c