2024年9月27日金曜日

ウクライナ軍の2つの大失敗

 北野幸伯<ルネサンス編集部>メルマガ <promo@renaissance-sk.jp>
2024.0927 より

私は、北野幸伯氏の論説が100%正しいかどうか判断する能力を
持ち合わせません。
ただ、私の今までの人生経験・知見のから判断すると、
物事の本質を捉えていて、ほぼ正しい、と思っています。

それは彼のモスクワエリート大学における勉学と
類稀な権力人脈との長い交友体験に根ざしていると思っています。

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たった1人でソ連を崩壊に追い込んだ男

アメリカ側の勝利で幕を閉じた、
米ソ冷戦。

実は、アメリカの勝利には
たった1人でソ連を崩壊まで追い込んだ、
ある男の謀略が大きく関わっていました…

その男は、レーガンでもなければ、
トルーマンでも、ケネディでもありません。

>その男の正体とは?

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

こんにちは、
ダイレクト出版・政経部門の磯村です。

ウクライナ侵攻から2年半が
経過しようとしています。

ウクライナは、8月下旬の時点で
東京23区2つ分の広さのロシア領を
支配しているそう。

今後、
戦況はどのように変化していくのでしょうか?

そこで本日は、
国際関係アナリストの北野幸伯先生に、
「ウクライナ軍の越境攻撃と【 兵站 】」
についてお話しいただきました。

=====

From:北野幸伯

★ウクライナ軍の越境攻撃と【 兵站 】

ダイレクト出版
ルネサンスメルマガ読者の皆様、こんにちは!
北野幸伯です。

久しぶりに、ウクライナ戦争の話です。

2022年2月24日に
プーチンがウクライナ戦争を始める前、
私は二つのことを書いていました。

一つは、
プーチンがウクライナ侵攻を決断する可能性がある。

もう一つは、
プーチンがウクライナ侵攻を決断すれば、
【ウクライナとの戦闘に勝っても負けても】、
ロシアの【 大戦略的敗北 】は【 不可避 】である。

たとえば、
ウクライナ侵攻開始8日前、
2022年2月16日付の『現代ビジネス』は、

『全ロシア将校協会が「プーチン辞任」を要求…!
キエフ制圧でも【 戦略的敗北は避けられない 】』
でした。

@全文はこちら↓
https://gendai.media/articles/-/92504

そして、実際そのとおりになりました。

プーチンはすでに、大戦略的には負けています。

なぜ?

いくつか例を挙げておきましょう。

〇ロシアは国際的に孤立した

2022年3月2日の国連総会で、
ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議案が
賛成多数で採択されました。

この決議案に賛成した国は141か国。

国連加盟国193か国のうち73%は、
はっきりと「ロシアは悪だ!」と非難したのです。

棄権または意思を示さずが、47か国。
これらの国々は、中立です。

この決議案に反対し、
「ロシアの味方であることを示した国」は、
どのくらいいたのでしょうか?

ベラルーシ、北朝鮮、シリア、エリトリアの4か国だけ。

日本には、
中立国家をちゃっかり「ロシア側」に入れて、
「孤立していない」と主張する人たちがいます。

しかし、実際
「俺たちはロシアの味方だ!」と手を挙げた国は、
4か国だけなのです。

日本にも、
「悪いのはアメリカとウクライナだ!ロシアの側につけ!」と
言う人もいます。

日本が、北朝鮮、シリア、ベラルーシと一緒に
ロシアの側につく??????

どれだけ変な主張なのか、
ご理解いただけるでしょう。

〇プーチンは、国際社会で【 戦争犯罪人容疑者 】

2023年3月、国際刑事裁判所(ICC)は、
プーチンに【 逮捕状 】を出しました。

容疑は、プーチンが、
「ウクライナから子供を大量に誘拐させていること」です。

これでプーチンは、
ICC加盟国世界124か国に行くと
逮捕されることになりました。

とはいえ、最近彼は、
ICC加盟国モンゴルを訪問して逮捕されませんでしたが。

しかし、
「国際社会でプーチンが、
オフィシャルに戦争犯罪人容疑者である」
ことに変わりはありません。

〇プーチンは、NATO拡大阻止に失敗した

プーチンがウクライナ侵攻を開始した理由の一つは、
「NATO拡大を阻止するため」でした。

ところが、彼の思惑に反して、
NATOは拡大しました。

それまで、
フィンランドとスウェーデンは中立で、
NATOに入る気が全然なかった。

ところが、ウクライナ侵攻で
「クレイジーなプーチンは、
いつイチャモンをつけて攻め込んでくるかわからない」
と恐怖した。

それで、
両国共にNATO加盟を決めたのです。

フィンランドは2023年4月、
スウェーデンは2024年3月に加盟しました。

プーチンは、
「NATO拡大を阻止するために」
ウクライナ侵攻を決断し、
逆にNATOを拡大させてしまったのです。

これは、
「わかりやすい戦略的敗北」の一つでしょう。

〇ロシアは、「旧ソ連圏の盟主」の地位を失った

ウクライナ戦争が始まる前、
ロシアは、なんやかんや言っても
「旧ソ連圏の盟主」でした。

ところが、ウクライナ侵攻後、
ほとんどの旧ソ連国がロシアから離れる選択をしています。

ウクライナ、モルドバ、ジョージアは
2022年2月、EU加盟申請を行いました。

アルメニアは2024年6月、
ロシアを中心とする軍事同盟CSTOからの
脱退を表明しました。

中央アジアの旧ソ連国
カザフスタン、ウズベキスタン、
トルクメニスタン、タジキスタン、キルギスは、
ロシアを捨てて中国に走っています。

2023年5月、
中国と中央アジア5か国は、
「中国中央アジア運命共同体」を創ることで
合意しました。

こうしてロシアは、
「旧ソ連圏の盟主の地位」を喪失したのです。

〇ロシアは中国の属国に

ウクライナ侵攻前、
ロシアの最大顧客は欧州でした。

しかし、ウクライナ侵攻開始後、
欧州は、ロシア産の天然ガス、原油、石炭の輸入を
大幅に減少させました。

さらに、
ロシアの主要銀行はSWIFTから排除された。

別の言い方をすれば、
ロシアは、「ドル圏」「ユーロ圏」から
追放されたのです。

結果、ロシアは中国に、
天然ガス、原油、石炭を、
【 人民元 】で輸出せざるを得なくなりました。

中国は価格主導権を握り、
安値で買いたたくことも、
ロシアが亡びない程度の値段で買うことも、
自由にできるようになりました。

こうして、
かつてアメリカと世界を二分した
超大国ソ連の後継国家ロシアは、
中国の属国に墜ちたのです。

長くなるので、
この辺でやめておきましょう。

もっと詳細に知りたい方は、拙著

◆『プーチンはすでに、戦略的には負けている』



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▼ウクライナ軍の健闘と失敗

ウクライナが大国ロシアを相手に、
驚くほど健闘していることは、
誰もが知っています。

戦争初期、
首都キーウにむけて進軍してきた
ロシア軍の戦車部隊を、
ドローンやジャベリンで撃退した。

また、ウクライナ軍は、
ドローン、水上ドローンを使い、
ロシア黒海艦隊をクリミアから撤退させることに
成功しています。

『ニューズウィーク』4月15日付。

〈最近撮影された衛星写真によると、
ウクライナのドローンやミサイル、特殊部隊による
定期的な攻撃の圧力に押されてきたロシアの黒海艦隊は、
クリミア半島の主要な海軍基地をほとんど放棄した模様だ。〉

ーー

とはいえ、
ウクライナ軍もいくつか大失敗をしています。

一つは、
反転攻勢の時期を間違えたことです。

アメリカは、
2023年4月に開始するようアドバイスしていました。

しかし、ウクライナ軍は、
「欧米からの武器到着を待って、準備万端で」ということで、
「6月開始」にしたのです。

この二か月で、ロシア軍は、
地雷原をつくったり、塹壕を掘ったり、
戦車の移動を妨げる「ドラゴンの歯」などを設置した。

もう一つは、
反転攻勢のターゲットを分散しすぎたことです。

アメリカは、南に戦力のほとんどを集中させ、
ザポリージャを抜けてクリミアに入るよう
アドバイスしていました。

しかし、ウクライナ軍は、
東、南東、南の3つに軍を分けた。

結果、戦力が分散され、
一つも勝利することができなかったのです。

2023年秋になると、
アメリカ下院で過半数を占める共和党トランプ派によって、
アメリカはウクライナをほとんど支援できなくなりました。

その状態は、
2024年4月までつづいたのです。

この期間にロシア軍は優勢になり、CIAは
「アメリカが支援しなければ、
2024年末までにウクライナ軍は負ける」
と予測しました。

しかし、支援継続が決まったことで、
ウクライナ軍は生き延びることに成功した感じです。

そして、8月6日、
ウクライナ軍はロシア領クルスク州への
進軍を開始しました。

8月末時点で、
100の町村を支配下におさめることに成功したようです。

『AFP=時事』8月28日付。

『ウクライナ軍、ロシア領100町村制圧 約600人を捕虜に』
〈ウクライナ軍の
オレクサンドル・シルスキー(Oleksandr Syrsky)総司令官は、
ロシア西部クルスク(Kursk)州への越境攻撃により、
これまでに100町村、計1294平方キロを制圧したと発表した。〉

──

このことが、
「プーチンに大恥をかかせた」
「プーチンの権威を大いに傷つけた」ことは
間違いありません。

なんといってもプーチンは、
「超短期間で終わる」という意味で、
ウクライナ侵攻を「戦争」と呼ぶことを禁じ、
「特別軍事作戦」と呼ばせているのです。

「ウクライナなんか、ちょろい!」
という意味です。

ところがウクライナ特別軍事作戦は長引き、
すでに2年半が経過した。

ウクライナ軍はクルスク州を占拠し、
モスクワでもドローン攻撃がある。

これ、
「全部プーチンのせい」と言えるでしょう。

なんといっても、
彼が「ウクライナ侵攻」を決断し、
命令したのですから。

今起こっていることは、
全部彼の間違った決断の結果です。

ですが、もう少し現実的に見てみましょう。

ウクライナ軍が越境攻撃を始めた動機は、
いろいろあります。

その一つは、
「ウクライナ東部ドネツク州
(ロシアは2022年9月、一方的に併合を宣言した)の戦場から、
ロシア軍をクルスク州に向けさせたい」
というものです。

というのも、
ドネツク州で戦略的に重要な市ポクロフスクをめぐる戦闘で、
ウクライナ軍が劣勢である。

ウクライナ軍は、
ロシア領クルスク州に進軍することで、
ドネツク州のロシア軍の一部を
クルスク州にむかわせたい。

それによって、
現在の劣勢を挽回したいのです。

ところが、ロシア軍は、
クルスク州を見捨てることにした。

つまり、
「兵力は分散させない。クルスクは気にしない」と。

なぜ?

「ウクライナ軍の罠にははまらない」
ということでしょう。

日本では、ウクライナ軍がロシアに越境攻撃した件で、
だいたい二つの反応が見られます。

一つは、「平和ボケ」な反応。

「ウクライナがやっていることは、
ロシアへの侵略なのではないか?許されるのか?」

こういう人たちは、
「北朝鮮が日本にミサイルを撃ったら、撃ち落とすのはいい。
だが、北朝鮮のミサイル発射台を日本が破壊するのはだめだ!」
とかいうのでしょう。

もう一つは、
「ウクライナ軍すげえ!」「ロシアおわた!」
という反応。

気持ちはわかります。

しかし冷静に考えてみると、
そう楽観的にはなれません。

なぜでしょうか?

ウクライナ軍は現在、
東京23区2つ分の広さのロシア領を支配しているそうです。

ウクライナ軍は、
もっとロシアの深くまで進軍することはできるのでしょうか?

もっと広大な領土を制圧することはできるのでしょうか?

客観的にみると、難しいでしょう。

なぜでしょうか?

もしウクライナが、
もっとロシア領深くまで進軍したり、
もっと広い領土を支配しようとすれば、
それだけ人が必要になります。

クルスク州の人員を増やせば、
ドネツク州の兵士は減り、
ウクライナ軍はますます劣勢になるでしょう。

そして、もっと深く進軍すれば、
【 兵站の問題 】がでてきます。

かつて、フランスの英雄ナポレオンは、
ロシア帝国に戦いを挑むという
人生最大の失敗を犯しました。

老獪なロシア軍のクトゥーゾフ総司令官は、
ひたすら戦いを避け、
ナポレオン軍が飢えること、
凍えることを待ったのです。

60万人の大軍だったナポレオン軍は、
飢え、凍え、フランスに戻れたのは、
1%以下の5000人でした。

この大敗北が、
ナポレオン没落のきっかけになりました。

ヒトラーは1941年6月、
独ソ戦を開始しました。

彼は、
「5カ月でソ連を降伏させることができる」と
楽観視していたようです。

ドイツ軍はモスクワ近郊まで進軍しましたが、
10月になると雪が降り始め、
【 兵站の問題 】がでてきた。

結局、ヒトラーは、ソ連に敗北。

ヒトラーも、ナポレオン同様、
ロシア(ソ連)に敗北し、
没落していったのです。

ナポレオン、ヒトラーとの戦い。

ロシアでは「祖国戦争」「大祖国戦争」と呼ばれ、
重視されています。

ロシア人は、
「外国がロシアを攻めてきても、
広い国土、寒い冬が守ってくれる」と信じている。

実際、広大な領土のロシアに深く攻め込めば、
【 兵站の問題 】が発生し、
負ける可能性が高まります。

だから私は、
ウクライナ軍がロシア領に深入りしないことを
願っているのです。


◆長いPS

ちなみに、日本も、
ナポレオンやナチスドイツを笑えません。

一橋大学の吉田裕名誉教授は、
こう語ります。

〈「年次別の戦死者数を公表している
岩手県のデータなどから推計すると、
軍人・軍属の87.6%は1944年1月以降に
亡くなっていました。

問題はその死に方です。

戦争ですから、
多くの人は戦闘で命を落としたと考えるでしょう。

でも、日本軍は1944年以降、戦病死者が多く、
ある中国の連隊の史料では戦病死者が戦没者に
占める割合は73.5%にもなりました。

実際に全戦没者で見れば、
この数字より多い可能性が高いです。

その戦病死の中身も、
栄養失調による餓死、
あるいは栄養失調の果てに
マラリアに感染というケースが多い。

餓死の比率は61%や37%などの説があり、
確定はしていません。

ですが、
おおむね半数が餓死者だったと言っていいでしょう」〉

(『ヤフーニュース オリジナル特集』2022年7月31日付)

ーー

「おおむね半数が餓死者だった」(!)

日本軍がいかに【 兵站 】を
軽んじていたかわかるでしょう。

私たちは、先の敗戦の理由を知るためにも、
これから同じ過ちを繰り返さないためにも、
戦争の勝敗を決める大きな要因を理解するためにも、
【 兵站 】について知っておく必要があります。

「どうやって???」

元陸相の福山隆先生が、ずばり

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<メルマガ著者紹介>

国際関係アナリスト
北野 幸伯

 
「卒業生の半分は外交官、半分はKGBに」
と言われたエリート大学:
ロシア外務省付属モスクワ国際関係大学を
日本人として初めて卒業。

その後、カルムイキヤ共和国の
大統領顧問に就任。

大国を動かす支配者層の目線から
世界の大局を読むことで、数々の予測を的中。

自身のメルマガは、ロシアに進出する
ほとんどの日系大手企業、金融機関、政府機関の
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パワーゲーム・活動のビジョン
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2024年2月27日火曜日

裏金問題・『政治不信の根源は制度の問題』

 

冷泉彰彦のプリンストン通信 2024.02.20

『政治不信の根源は制度の問題』

政治が混迷しています。冷泉彰彦さんが、問題点を浮き彫りにして、

かつ、解決案も提示してくれています。

これをたたき台にして、私たちも考え、何らかの行動に移しましょう。 

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安倍派の5人衆は起訴されず、このままですとキックバックへの追徴課税も行われるのか分かりません。また、旧統一教会の支援を受けていた盛山文科相も「お咎めなし」となるようです。どうやら、岸田政権は当面の解散を諦めたフシがあります。

 ・・・どういうことかというと、余りにも自民党への逆風が激しいので「解散したらみんなの議席が吹っ飛びますよ」ということを、党内の議員たちに脅迫するという構図です。・・・9月の総裁選も「内紛を起こしたら党の支持率は更に下がる」ので、何もしないで静かにしておく、だから「自分の続投でいいじゃないか」という線に持っていこうとしているのかもしれません。

 そこで、反対に解散しないのであれば、「民意は問わない」のだから、何をしても選挙には負けないということになります。・・・つまり不戦敗なら岸田の責任になるが、立てて負ければ候補者と党全体の責任ということです。

 そこで、選挙がない、補選は候補を立てて捨てるという「覚悟(?)」ができれば、民意を踏みにじってもどうでもいいということになります。裏金への追徴もしないし、盛山大臣は続投として、内閣支持率が下がっても何も怖くない「無敵内閣」というわけです。・・・この状態であれば岸田を辞めさせる理由はないという強弁も可能は可能です。

ですから、岸田としたら悪いのは自民党、特に安倍派と二階派だとして、自分は居直ることが可能になります。

 世論は完全にナメられているのです。これが、何でも反対の無責任な世論であれば岸田の居直りにも一部の理屈があるかもしれませんが、世論には様々な不満が渦巻いているのです。勿論、野党が「専業野党」になっていて、政策代案もなければ、統治能力もないという中で、岸田政権が延命してしまうという問題はあります。ですが、そもそも自民党に世論の声を聞く気がないというのが大問題です。

どうして、自民党の政治家は「キックバックによる裏金」にも、「宗教団体の怪しい支援」にも平然と居直っているのでしょうか。それは、彼らが人格破綻者だからではないと思います。そうではなくて、そこには1つものすごく巨大な「彼らなりの大義」があるからだと考えられます。

それは、特に小選挙区の場合がそうですが、「どう考えても統治能力も、政策代案もない野党政治家」に対して、与党の自分は「不利だ」という思いといいますか、怨念があるということです。怨念というのは、つまり自分のほうが正しいにもかかわらず、ドブ板選挙をしないといけない、そして何よりも選挙事務所の手が足りない、選挙区で票をまとめるには有力者、例えば県議、市議などの集票マシンにカネを撒く必要があるという「何かマイナスを背負っている」という意識です。

利益誘導を露骨にやれば逮捕される、かといって政策を訴えても反応はない、野党の方は何でも反対していると結構票が入るが、自分は本当にヘトヘトになるまで頭を下げてやっと当選だ、そんな思いです。当に怨念といって良いでしょう。

 とにかく、自由経済を守り、経済活力を守り、安全保障のバランスを守り、エネルギーを何とかバランスよく供給するということで、有権者の生活は成り立っているのは事実です。ですから自民党の候補は「そんな有権者の生活を守り、この国を守るのは自分であって野党ではない」という自負を持っているのだと思います。

 にもかかわらず、自分は本当に苦しい選挙戦を強いられて、特にそこではカネが必要になる、そのカネは政治資金規正法で締め上げられています。けれども、辛うじてパーティー券収入のキックバックがあるので、多少は柔軟に使えるカネがあるというわけです。

 そのカネにしても、本来は使いたくないはずです。県議、市議にカネを配る、冠婚葬祭がどうのこうの、あるいはイベントがあれば何か酒樽とかご祝儀とか、胡蝶蘭の鉢がどうとか、泥臭いカネの配り方、使い方をして初めて「選挙区から票を絞り出すことができる」・・・政治家の中でも政策に命をかけてきた人物にとっては、その全体が屈辱でしょう。好きでやっている人は少ないと思います。

 一方の野党は人気取りが上手で、メディアも味方するので「クリーンな選挙」ができることになります。けれども、自分は人に言えない泥臭いカネを動かして辛うじて勝ってきた、でも、実際に国のため、有権者のためになるのは自分であって、絶対に野党政治家ではない、そんな心理です。だったら、裏金について詫びるなどということはしたくないはずです。

 自民党政治家の多くが、裏金問題では「どんなに批判されても頭を下げない」のは、そのような心理があるからだと考えられます。まして、その裏金に税金をかけられたり、支払先を全部公開しろ等と言われたりというのは、絶対にできないし、したくもない、勿論、説明しても理解されないことは分かっているが、自分は絶対に認めたくない、そんな心理がありそうです。

 では、そんな困難に耐えている自民党議員は正しいのでしょうか。そんなことはありません。

 一つ言えるのは、有権者も悪いということです。小渕優子氏に観劇旅行をねだったり、安倍晋三氏に「アンタが総理で威張っているのなら、地元の支持者にもせめていい思いをさせろ」などと「桜を見る会」への格安参加をせびったり、そうした有権者は全部、収賄罪で逮捕すべきです。

 が、政治家としてはそれもできません。有権者は神様だということはあると思いますが、とにかく保守票田にはそのような問題があり、そうした票田に頼って初めて、自由経済や安全保障が維持できるのなら、仕方がないというようなことだと思います。

この認識と心理が、今回の事件の最大の問題です。仕方がないじゃないか、そうしないと選挙に勝てないのだから、そして統治能力があるのは自分たちだけなんだから、とにかく仕方がない、こうした心理が大問題だと思います。

 念のためにお断りしておきますが、野党系の論客が「結局は自民党政治がダメだったからGDPが世界4位に転落した」などと、今回のスキャンダルと自民党の統治を一緒にして批判するような例は多いようです。ですが、これも間違っています。西側同盟を冷笑し、したがって自由と民主主義を冷笑し、自由経済と経済成長を冷笑してきたのは野党であって、それを忘れて、自民党に下野しろと迫るのは無責任です。

その証拠に、自民党の支持率が21%とか10%台にまで落ちているのに、「野党には代替政権の構想もなければ、その代替政権の政策協定の交渉も始めていない」のです。これ以上の無責任があるのかということです。確かに裏金作りは犯罪ですし無責任です。宗教団体に首根っこをつかまれて、自分たちとの関係を自分たちでリークしながら復讐されている姿は悲惨であり、正視できません。

 ですが、21%しか自民党を支持しないというのは、世論の89%については「統治能力と正しい政策があれば野党に政権を任せても良い」という考えを持つ「かもしれない」可能性を示しているのです。その民意を完全に無視している野党の犯罪性というのは、盛山大臣や五人衆の犯罪性に比べて、遥かに遥かに悪質であり、究極の無責任であり有権者への裏切りと言っても過言ではありません。

 では、国民は腐敗した与党と、無能で無気力な専業野党の間で、ただただ国運が加速度的に傾くのを黙って見ているしかできないのでしょうか。政治改革と言っても、政治家が腐敗しているか無能である以上は、事態が改善する可能性はないのでしょうか。

 実は、この点に関しては制度で解決できる問題があるのです。それは、「幅広い有権者を巻き込んだ各党における党首予備選の実施」であり、もう一つは、「首班指名以外の党議拘束の廃止」です。

 直接民主制には反対ですが、この2つを実施すれば政治改革を前進させることは可能です。また、無能な与野党党首を取り替えることもできますし、何よりも自民党の派閥は本当に解消できます。旧岸田派の代表で上川氏にスイッチだとか、小池との連携だとか、怪しい密室人事ではもうダメです。

人事に勝ち上がった政治家が、総理として国民に対峙した途端にコミュ力のスキル欠落が暴露されて政権が崩壊するというような、バカバカしいムダもなくなります。

 一番のメリットは、政策で候補を選ぶことができますから、全ての選挙区における全ての選挙がガチンコの民意が反映する場に変わるのです。

 共産党の密室での党首選びもノーです。共産党だけでなく、左派政党一般が高齢者に偏った政策に偏るのも、予備選でノーが突きつけられますし、反対に有権者の政策要求の代表になり、そのような政策を掲げる政治家がいれば、その主張は広範な民意の洗礼を受けることができます。

 そこである政策を代表する候補が当選したら、その政策を国会で主張したら良いのです。自民党の政務調査会などの密室ではなく、また税調などの密室ではなく、国会で堂々とガチンコの政策論議をするのです。そして、選挙の公約に違反するような言動が出てきたら、次の選挙では現職でも予備選でクビにするのです。

 そのようなガチンコ政治が実現できたら、今度は大企業だけでなく、国民一人ひとりが「誰を自分の代表として国会に送るか」ということを真剣に考えるようになります。そうなれば、政治資金は小口の個人献金を集めることで、完全にクリーン化できます。

勿論、問題点はあります。アメリカにおけるトランプ派の拡大、民主党の党内対立など、政策がまとまりにくくなるとか、一種の衆愚政治に陥る危険はあります。ですが、その点では、有権者の平均値でも中央値でも日本の場合は、アメリカより民度は高いわけで、その高い民度を誇る有権者が「予備選」に責任をもって参加して、総理候補、各党党首、各議員候補を政策を中心に判断していくのであれば、日本の民主主義の再生は可能であると思います。

とにかく、派閥人事も、県議市議を使った集票工作も、無難な人物しか党首に選べない穏健野党とか、反対に党首公選を主張したら追放するなどという非常識な野党も、全て丸ごと過去にしなくてはなりません。

 とにかく、諸悪の根源は、党首と候補の密室人事、そして党議拘束にあります。この2つを続けている限りは、100%の民主主義にはなりません。そして、裏金の問題も、派閥の問題も、何よりも社会の閉塞感も全てがこの問題に関係していると思います。

日本の政治は制度で改善できるのです。政治風土が悪いとか、有権者が低レベルだというのではないのです。(収賄体質の有権者は断罪されるべきですが)そこを突破することで、時代を先へ進める時期が来ている、今回の事態はそのように考えないと、解決しないと思うのです。

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2024年2月14日水曜日

「日本の国際報道はウソだらけ」

「日本の国際報道はウソだらけ」

(島田洋一・飯山陽共著かや書房)

 この本はすばらしい!

「農家はもっと減っていい:農業の『常識』はウソだらけ」(久松達央著)
に続く快挙です! いい傾向です。

久しぶりに本物の国際論・政治論・平和の哲学を読んだ気がしました。
一般的にはこの種の論説を「右翼だ!」と論評するようですが、
とんでもないです。
真の平和と民主主義を希求する論説だと思います。

ぜひ、ご一読ください。

闘う弁護士 とある九州男児 さんから昨日頂きました。
素晴らしくて、一気に読んでしまいました。
まったく、違和感なく読めました。

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画層をクリックすると拡大します。

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「はじめに」、「おわりに」、「目次」だけ、

コピーしました。何を言わんとしているか、解ります。









日本の政界やマスコミの常識は、国際常識と
真反対のことが多い!

不都合な真実を語る人間は、
政界・学会・メディア界から排除される。
国民が真実が真実をしる術がない!
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2024年1月28日日曜日

高天原 中つ国 根の国

 この文章は、哲学者水山昭雄さんのものです。
日本の神話から導き出した素敵な考え方だと思います
こんな国に致しましょう。

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高天原 中つ国 根の国

2023年10月19日 12:53

 日本の神話によると、①高天原と②中つ国と③根の国の三界があります。それらは天上・地上・地下の三つの世界のことです。私はその三つの世界観を、現実的かつ現代的に解釈し直してみました。
【高天原】は、無限かつ無条件の愛が充満する世界であり、天照大神さまが治めておられます。それは「幸あるところ・広大な美しい世界・善い人だけが住んでいる【理想の世界】」です。
【中つ国】は、そこの住民が高天原の神々の指導を直接、受けているため、性善説が支配的になる【神の国】のことです。そこの国民は、健康と長寿に恵まれ、豊かで苦しみのない幸ある人生を楽しむことができます。
【根の国】は、どちらかと言うと我(が) が強く、表と裏の二面性を持つ住民が、高天原の神々の指導を受けることを好まないため、性悪説と自己愛が支配的となる煩悩だらけの世界のことです。そこは忍耐を要する世界であり、対立と不和が生じることがあり得るところです(注:念のために述べておきます。ここで述べている「根の国」は現世における世界観であり、来世の世界のことではありません。この論文では、すべて現世・現実世界のことについて述べております)。
 私たちは現代の日本が、性善説が支配的となる「幸あるところ」である【中つ国】となることを強く望んでいます。無限かつ無条件の愛が存在する高天原の神々を、神話の世界に閉じ込めていてはいけません。祝詞と祈りの力によって、私たちの世界に降りてきてもらいましょう。
 日本の神々は全国各地の海抜1000m以上の山々の山頂と高原を、地上の高天原と定められました。全国各地にある地上の高天原を訪れるか、もしくはその世界のことを観想する(イメージする) ことによって、私たちの心は解放され浄められて、苦しみのない幸ある【理想の世界】の存在を、実際に体験することができます(注:観想とは「特定の対象に向けて【心】を集中し、その姿を観察すること」です)。
 その精神を地上の【中つ国】に持って帰り、みんなで力を合わせて、自分の世界・家庭・サークル・学校・地域・会社、そして日本國ならびに世界全体を「幸ある理想の世界」にしましょう。私たちが、心からそれを望み、必要な行動を起こしたならば、その願望は実現するでしょう。

哲学者 水山昭雄

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2023年12月11日月曜日

日本が「使えるお金」は世界何位? 家計や企業などの可処分所得を国際比較

 今、経済の低迷が問題になっています。

私達の使えるお金はどうなっているのでしょうか?

考えさせられる記事・データを見つけました。

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裕福な高齢世代はもっと負担を

(文藝春秋 2023年12月号「緊急提言 日本の危機の本質」より抜粋)

 日本の借金は、世界でも群を抜いている。GDPの250%に達する債務残高は、G7でも突出したビリだ。世界の優等生、ドイツの債務残高はGDPの60%程度。仮に日本がヨーロッパの共通通貨(ユーロ)に参加しようと思っても、借金が多すぎて参加基準を満たさない。ドイツ人に言わせると、日本はヨーロッパ基準では全く信用に値しないのだ。

 一方で、国民負担率の国際比較をすれば、日本は高くはない。OECD加盟国の中では低い方の部類で約48%。ドイツは54%、フランスは70%だ。

 しかし、いくら国民負担率が低いといっても、若者世代にこれ以上の負担を求めることは厳しい。せっかく稼いだ給料も、既に保険料や税金で結構引かれているのだ。いわゆる可処分所得の水準は、昭和や平成初期とは異なる。欧州委員会が出した国際比較を見ると、2000年の水準を各国100として比較した場合、日本の可処分所得は、1980年代は欧米を上回っていたのが、2020年になると、米国は日本の2.5倍以上、欧州は1.5倍以上の水準になっている。若い世代の負担感が大きいのは当然だ。反対に高齢世代が若い頃の負担は、実はそれほどでもなかったとも言える。

 さらに、現在の高齢世代の状況はどうか。高齢世代を見るには所得ではなく資産を見る必要がある。日本の金融資産は約2000兆円に上るが、この約6割が60代以上の高齢世代に集中している。加えて高齢世代は住宅資産も持っている。日本の資産が高齢世代に偏っていることは明らかだ。もちろん個々の高齢者には、資産も少ないうえに年金も十分ではない人もいる。メディアは選挙前ともなるとそういう人の苦しい話を取り上げて政権批判を煽る。しかし、世代間バランスを公平に見れば、日本の高齢者は明らかに裕福なのだ。そんなところで政権批判をしても本質を見誤るだけだ。

 つまるところ、国際比較で日本の国民負担が低くなっている理由は高齢者だ。社会保障費であろうが防衛費であろうが、必要な財源は、高齢世代がもっと負担しなければならないのだ。


可処分所得の平均値の国際比較

難しい専門用語があります。

・可処分所得:総所得から税・社会保険料を控除したもの。
・等価可処分所得(再分配後):世帯の可処分所得を世帯員数の平方根で除して
 調整したもの(医療・介護・教育等の現物給付は含まない)

MONOist のホームページからです。https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2308/09/news003.html


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2023年12月2日土曜日

世界に愛され、中国に憎まれた元・日本人

 

ダイレクト出版株式会社の林建良メルマガ2023.12.02より NOTTAにて

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 世界に愛され、中国に憎まれた元・日本人

林建良氏の本の紹介文ですが、李登輝さんが簡潔に説明されています。

 

一人の老人の死とともに一つの時代が幕を閉じました。2020730日、97歳で天寿を全うした李登輝氏。しかし翌日、世界の主要メディアがトップニュースでその死を報道し、世界各国の要人から哀悼の意が表されました。「彼は人類の尊厳を守った男として、永遠に人々の記憶に刻まれるだろう」

「彼の精神は永遠に生き続ける。彼の強い心自国への揺るぎない愛情と使命感、日本に寄せる温かい期待の言葉、今も昨日のことのように私の記憶に刻まれています。」と故安倍首相は語りました。97歳のたった1人の老人だ。なぜこれほどまでに世界各国の要人から惜しまれたのか。

しかし、次々に送られる哀悼のメッセージと、「歴史上の罪人」と遺影に赤いペンキをぶちまけ、死者に鞭打つような行為をした中国。世界に愛され、中国に憎まれたこの老人は一体何者なのか?そしてこの人物はなんと、元日本人でした。

1945815日、京都大学在学中に学徒出陣した私は名古屋の第10軍司令部で終戦を迎えることになった。辺り一面焼け野原の中、玉音放送も聞いた。その後、生まれ故郷に戻り、学者としてのキャリアを全うするつもりであった。ひょんなことから政治の世界に足を踏み入れた。49歳のことだった。かくして私は一介の学者から一国の最高指導者の地位まで上り詰めた。学者上がりの男に何ができるのか。誰からも期待されていなかった四面楚歌のリーダー。なぜなら、そもそも彼が抜擢されたのは平凡で野心がないからという理由だったから。

 

暗殺されないよう毎日を生きるのに精いっぱいだった。彼は当時を振り返ります。彼のすごかったところはそこから徐々に、しかし確実に国の政治を変えていったことでした。

偉業①「運命に導かれた平凡な学者が四面楚歌から国家を変えた」。とある暗殺事件をきっかけに逮捕され、あわや極刑という状態から、運命に導かれるように49歳で政治家に。政治経験はゼロ、金なし、コネなし、野心なしで誰も味方のいない男が国のトップに立ったのが65歳のときでした。そんな状態から、明治維新よりもすごい現代の奇跡とも言える国家の改革をたった1人で成し遂げるた。

偉業②「一滴の血も流さずに成功した民主化への革命」。フランス革命などの歴史からもわかるように民主改革は国内の大きな衝突を産み、混乱を引き起こすのがです。近代の例を見ても中東の民主化運動「アラブの春」は50万人以上の死者650万人以上の難民を出し、今世紀最大の人道危機と言われるほどの混乱を招きました。1980年代の東欧革命の流れの中、ルーマニアでは革命により失脚したチャウシェスク大統領夫妻が処刑されています。しかし彼は当時独裁体制だった台湾をなんと一滴の血を流すこともなく、民主主義国家へと変えることに成功したのです。

偉業③「565人の終身議員全員、引退に成功」。この男の偉業は独裁体制だった国を民主主義国家に変え、40年間も失われていた自由を取り戻しただけでは終わりませんでした。若者の声を聞き、国をより良くするために、8090代の終身議員11人を訪問して説得して歩いたのです。その誠意と思い切った戦略により、565人の全員を引退させることに成功。これによって国は新しい国会と完全に舵を切ることに。

 

このように数々の偉業を通して男は世界一の民主国家となる基盤を作りました。学者当たりの男がたった1人で、しかも争いで血を流すことなく革命を成し遂げたのです。そのたった1人の革命を支え続けたのが日本の武士道精神でした。彼は、「私は22歳まで日本人だった」というのが口癖で、日本語はペラペラ。日本メディアの取材や講演会では、日本語で対応するほどでした。日本を愛し、死ぬ間際まで日本の将来を心配していました。

李登輝は中国と対峙して、中国と台湾は別の国だと世界に知らしめ、歴史を作った。政界を引退した後、世界の要人から慕われ、教えを請うと多くの人が李登輝のもとを訪れました。20207月に惜しまれながらこの世を去りました。そんな現在の偉人とも称される李登輝です。

その彼が、自分のもう一つの故郷として愛した日本の未来を心配して「これを日本人に届けてほしい」とある人物に託した遺稿がありました。そこに記されていた李登輝の波乱万丈の人生を支え続けた日本精神、「アジアのリーダーになるのは日本の他にいない」という信念、日本人が失ってしまった強さと自信を取り戻すための箴言の数々、台湾民主化の父李登輝を作り上げた日本精神とはどのようなものだったのか、日本人が失った強さと自信を取り戻すには何が必要なのか。

 

世界でもまだその存在を知られていない李登輝の遺言ともいえる原稿を託された人物は李登輝のスピーチライターを務め、20年代の同志でもあった林建良氏です。「僕の脳裏には今でも日本と台湾は運命共同体なんだよ」という李登輝の声が聞こえてきます。そう語る林建良さんは、1958年の台湾生まれ、李登輝とは対照的に、戦後の台湾で偏った反日教育を受けて育ちました。日本で医師免許を取るため、東京大学の医学部に進学して初めて、台湾で学んだ歴史がいかに歪められていたかを知り衝撃を受けました。台湾の教育では完全になかったものにされていた日本との関係など、日本と台湾の本当の絆の深さを知ることになります。以来20年間、李登輝と志をともにする同志として、李登輝のスピーチライターを務め、彼の中にある日本的なもの全てを日本を愛する1人の台湾人の視点で、日本社会全体に伝えるべきなんだと活動を続けてきました。李登輝は林さんを非常に信頼していて、台湾政府の人事の相談もするほどでした。林さんが、あの大臣は良くないと助言をすると、その日のうちに李登輝はその大臣を更迭などという驚くべきエピソードも残っています。スピーチライターは本人に代わって原稿を作成するのが仕事。林さんが自分の頭の中に李登輝が入り込むほど、李登輝の哲学を理解しています。李登輝が日本語でスピーチをする言葉は李登輝を知り尽くした林さんが紡ぎ出したもの。スピーチを考えるときは、ほぼ李登輝と同一人物になっていると言っても過言ではないほど、林さんは李登輝の教えを熟知しているのです。

 

その教えの中心にあるのが、日本精神、台湾語でリップン精神とは日本統治時代に台湾人が学んだ誠実・勇気・勤勉・奉公・自己犠牲・責任感・清潔のもろもろの美点をさした言葉です。李登輝氏は日本人が日本精神を失わない限り、日本は世界のリーダーとして発展し続けると言い続けてきました。もしあなたがここ最近の日本に疑問を感じ、日本はこのままで大丈夫なのだろうか。日本人は、何か大切なものを失ってしまった。日本人として、国に対して怒りや失望しか抱けず何も希望が持てない。そんなもどかしさや空虚さにさいなまれているとしたら、そしてなぜ日本はこんなふうになってしまったのだろうと日本人としての自信を失いかけているとしたら、

李登輝のメッセージはあなたを勇気づけることになるでしょう。なぜなら、眠れる日本精神を揺り起こすのがこの李登輝のメッセージだからです。日本人の心の奥底に眠る心の強さに気づけば、日本は必ず立ち上がれる。そんな思いを繋いで、20238月、1冊の書籍が誕生しました。李登輝と最も繋がりの深い林健良さが李登輝に託されたメッセージを日本に届けたい、その一心で3年の歳月をかけて完成したのがこちらの書籍「李登輝の箴言・未来の日本人へ:不屈の台湾国家戦略を支えたもの」です。

 

日本統治時代に生きた李登輝は、武士道を(たしな)み台湾と日本が自分の二つの祖国だと話し「日本よ強くなれ、胸を張れ」と最後までメッセージを送り続けていました。そんな李登輝がいずれ日本人に伝えたいと話していたものです。李登輝という人間を作り上げたリップン精神・武士道精神を培った戦前の日本教育とはどのようなものだったのか、中国の様々な汚い暴力にどう立ち向かったのか、そのとき日本統治時代の教えがどう生きたのか、誰一人として仲間がいない中でも、どのように国をまとめ上げ、民主化へと導いたのか、数々の偉業をやり遂げた男の全ての戦略の根底にあった哲学とは何だったのか、書籍の一部をご紹介すると、

序章「李登輝精神とは何か」。世界中が(いた)んだ97歳の元政治家の死、李登輝が尊敬される所以、李登輝精神、実践の哲学。

1章「誠実自然」。李登輝が好んだ言葉、日本精神とは、武士道精神と大和魂。

2章「金で解決できることは全て小事」。悩み多き若者たちへ李登輝が伝えたいこと、その悩みは大事か小事か、判断基準は二つ。

3章「安易にカードを切るな」。運命を変えた二つの暗殺事件、連行・救出そして政府への抜擢。

4章「適応させる知恵と器量」。敵がいることは悪いことなのか、李登輝がしのいだ総統就任直後の暗殺危機、などなど全9章で構成されており、李登輝の波乱万丈の人生を通した哲学と理想を持ってる人ほど壁にぶち当たり、苦労する。そういった時代にも関わらず、尚、志を持って生きようとする人が、日本人として恥ずかしくない人生を生きたいと思ってる人に対して、何を考え、どう行動していくべきかというメッセージがちりばめられています。

 

藤井厳喜氏が次のように語りました。

「他の誰も書くことのできない書籍をここに完成してくれた。この本は僕らが死んだ後もずっと残ります。日本の名著の一つとして長く日本人に親しまれ、心の糧となることを期待し、また確信するものであります。人生の指南書とも言えるものです。駐日台湾大使からも直々に公式推薦文をいただいています。李登輝の思想とその実践の足跡を非常に的確に書き表し、その深淵に迫る書、1人の人物の思想の中身とそれを実践してきた様な長い時間にわたる記録や間近での観察を通して、ようやくその奥深くに迫ることができ、本書の作者である林建良氏は、李登輝元総統のスピーチライターを長年務め、さらに彼自身が揺るぎない台湾意識の持ち主である。だからこそ、彼の手になる本書は、李登輝の思想とその実践の足跡を非常に的確に書き表し、その深淵に迫るものになっている。」

 

既に本書を読まれた皆様からも続々とご感想をいただいています。二つ紹介します。

「李登輝について書かれたものはたくさんあり、一定の認識は持っていたつもりであるが、本書は類書の中でも高い評価を受けるに値する。特に李登輝が国民党の内部で徐々に権力を獲得している過程を解き明かしており、国民党の守旧派の勢力を、巧妙に取り崩していく経過は興味深かった。」

 

「日本では失われつつある日本精神を貫き通した信念は今の日本の政治家は大いに見習うべきではないでしょうか?昨今私利私欲のために政治を利用している政治家の多いことに腹が立っています。政治家はこの本を読んで自らの指針としていただきたいと思いました。」

 

こんな政治家が戦後の日本にいたら、日本ももう少しマシな国になっていたでしょう。李登輝さんの心にあった武士道精神、大和魂、そして神を信じる心。みな元々日本のものであったのに、戦後全て失った日本人、精神的な支柱を何一つ持たないことが何より今の日本の病根と言わねばなりません。

日本人の心を狂わす現在の教育、李登輝の生きざまと日本への熱いメッセージを日本人向けの解説を加えて書籍にまとめたものです。李登輝さんが生きている間にできなかったことを引き継いでやりたい。これを伝えることが僕の使命ですという林先生の強い願いがこもった書籍です。

ぜひご自身の目でご覧になって感じ取ってください。

 

この論説の動画

https://in.taiwanvoice.jp/vsl_futalee_2312_tv

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