芥川賞作家が直伝!知的になる
遅読の練習
How
to read bookls.
一冊の本を読み終えたとき、読む前とはまるで違う世界を見ているかのように感じる。
そんな豊かな読書経験をするために必要な方法とは。
小説家・平野啓一郎氏に話を聞いた。
私は、遅読に自信を持ちました!
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抜粋
仕事で明日までに大量の資料を読まなけれぱいけないようなとき、速読は必要でしょう。でもそれは、単に一時的な情報の処理であって、読書ではありません。
読書とぱ何か。それぱ、自分の人生を、今日のこの瞬間までよりも、さらに豊かで、個性的なものにすることでぱないでしょうか。単に表面的な知識で人を飾り立てるのではなく、内面から人を変え、思慮深さと賢明さとをもたらし、人間性に深みを与えるものではないでしょうか。そして何よりも、読書は楽しみなのです。楽しいことをするのに、慌てる必要はありません。
この考えから、私は、「スロー・リーディング」を提唱しています
本を遅く読む第1のメリットは、自分自身と向き合えることです。特に小説を読む場合は、登場人物、あるいぱ作者という、一人の他者と時間をかけてゆっくり向き合?ことで、彼/彼女を通じて自分自身の内面を発見することもあれば、自分の考えに変化が起こることもあるでしょう。
また、時間をかけて本を読めば、自分とは異なる人の意見にも耳を傾けられるようになります。ゼロ年代以降に企業や行政、教育など、あらゆる領域で行われてきた選択と集中は、すべて
失敗してきました。
スロー・リーディングは、また、言菓を深く理解する訓練でもあるでしょう。言業というものは、地球規模の非常に大きな知の球体であり、そのほんの小さな一点に光をあてたものが1冊の本という存在ではないかと私は思います。
1冊の本をじっくりと時間をかけて読むということは、実は、その本が生まれるために欠かせなかった別の10冊分、20冊分の本への扉が開かれることも意味します。スロー・リーディングとは、この言菓の森を奥へ、奥へと分け入っていく行為にほかなりません。
仕事の場面に限らず、あらゆる人間関係において、言葉の表現力はものを言います。言い難い人間の心情を言い当て、新しい概念を他者に説明するためには、やはり、言葉という、厳密で
思考に直結した手段が必要なのです。
具体的にどうやって本を読むといいでしょうか。まず私がすすめるのは、黙読です。音読を推奨する人もいますが、言語として習得する場合でなけれぱ、音読は効果的でないと思います。声に出すと、上手に読み上げることに気を取られてしまい、内容があまり頭に入らないのです
私が習慣にしているのは、本の気になる箇所に線を引いたり、印をつけたりすることです。
辞書を引く癖をつけるのも大事です。
読む本の媒体は、電子より紙がいいというのが私の意見です。電子書籍は、場所を問わずちょっと空いた時間にも読めるのが便利で、私も電車のなかで読んだりはします。ただ、「あそこに何か書いてあったな」と思ってあとから見返すとき、探すのがかなり面倒です。
本を読むときは、ほかにも、「なぜ」という疑問を常に持つようにしてください。「著者はこう言っているけど、本当かな」と思うことができれぱ、確認するために別の本も読もうとすることができます。「どうしてこんなことが書いてあるのだろう」と作者の意図を考えながら読むと、年か経ってから、「ああ、ずっと不思議だったけど、あれはそういうことだったのか!」と理解できるときが訪れるかもしれません。熟考の末、「作者の意図」以上に興味深い内容を探り当てて、「豊かな誤読」を生む可能性だってあります。読んだときの引っかかりを大事にし、立ち止まって、「どうして?」と考えてみることで、その読書体験が「読んで終わり」ではなく、未知の世界に開かれたものになるのです。
ある日、恐る恐る、知り合いの作家たちにたずねてみました。すると、意外にも、「実は自分も本を読むのは遅い」と言う人がほとんどだったんです。
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