2017年7月10日月曜日

蓼科だより・507号

★ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー2017年7月9日(日)★
★テーマ:福岡豪雨、食と農を地域にとりもどす、世界幸福度ランキング
     グローバル研修企画、
★蓼科便りは,重農主義を尊重し、地域自給圏構築をめざします!
★発行:田舎暮らし世話人・安江高亮(090-3148-0217)
★後援:NPO法人信州まちづくり研究会
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 福岡の豪雨災害は何というすさまじさでしょう。500ミリを超える雨は、当地域の半
年分です。九州では毎年大きな自然災害に襲われているので、長野県にいると申し訳な
いような気持ちになります。

 福岡にはこのメルマガを読んでいただいている方が10名ほどいらっしゃいます。皆さ
んには個別に申し上げましたが、改めて、心よりお見舞い申し上げます。
 土砂に流されたり埋められたりして亡くなってしまうなど、悲惨の極みです。もし関
係の方がいらっしゃいましたら、心よりお悔やみ申しあげます。

 後の文章が書きづらい気分ですが、気持ちを切り替えます。
 毎日ラズベリーが小ざるに一つ、採りはじめてもう2週間になりますが、量が減りは
じめましたがまだ数日は採れそうです。

 食後のデザートに砂糖少々と冷たい牛乳をかけて潰して食べています。爽やかな酸味
と甘みがすてきです。採りきれない時には近所のお馴染みさんに採ってもらい、食べき
れない分はジャム用に冷凍しています。次はブラックベリーとザクロです。

 今日は、ニンニクの収穫とその後の耕運、そして田の草取りをしました。毎年、ニン
ニクは良いものができます。土が合っているのかもしれません。

ーーー食と農を地域にとりもどす

 この言葉は、本「シビック・アグリカルチャー」(トーマス・ライソン著北野収訳)
のサブタイトルです。2012年に獨協大学北野収教授が翻訳出版したものです。昨年は、
「貧しい人々のマニフェスト」(北野収訳創成社)を翻訳出版し話題を呼びました。
 昨年、長野大学の関係で、上田でお話を聞く機会がありました。

 まだ全部読み終えていないのですが、読み進むにつれ、「スマート・テロワール・
農村消滅論からの大転換」との関係性の深さに気づかされました。というより、見てい
る角度が違うだけで同じことを言っているように思いました。

 「シビック・アグリカルチャー 食と農を地域にとりもどす」は、1990年代に姿を現しは
じめたアメリカの食産業の新しい動向を解析し論評しています。その新しい動向の行き
先は自給圏構想(スマート・テロワール)と言っていいと思います。

 「シビック・アグリカルチャー」を読んでハッキリしたことは、自給圏構想(スマー
ト・テロワール)とは、グローバル・フードシステムからローカル・フードシステムへ
の転換だということです。グローバリズムからローカルリズムへの、です。つまり、こ
の本を読んで、グローバル・フードシステム(米国の巨大アグリビジネス企業)の凄ま
じさがよく判ったからです。

(グローバリゼーションとは国際化のこと。グローバリズムは、グローバリゼーションを力ずくで
推し進めようとする主義のこと(本「新自由主義の自滅」より)。トランプの出現でグローバリズム
の見直しが始まっている)

 北野先生のことをもっと知ろうとWebを検索していたら、北野先生が著した「スマー
ト・テロワール」の書評を見つけました。これを読むと理解を深めることができます。
下にURLを添付します。

 この書評から、重要部分を引用します。
1.1998〜2000 年の間、米国コーネル大学で博士号取得のための勉強をしていた。
「村づくり」に内発的発展の理想を みていた私に、1918 年生まれのハンガリー人老教
授はすべてを見通しているかのように懐疑的見解を示した。彼の指 導の下まとめた研究
の結論は消費者のまなざしを獲得できない村は、農村らしさを維持できず、地域コミュ
ニティの存 続すらままならない」という現実である。「消費者のまなざし」とは、東京
の人の興味とお金とほぼ同意語といってよい。 全国レベルの市場競争に身を委ねるか、
安楽死するかという過酷な選択である。>

(私)翻訳物独特の難解さがありますが、この過酷な選択への回答が「シビック・アグ
リカルチャー」と「スマート・テロワール」だと思います。日本は1990年のバブルの崩
壊以来、ず〜と全国レベルの市場競争を続けてきました。

 東京の市場に出るということは、世界の市場に出ることを意味します。つまり、グロ
ーバリズムの流れの中でもがいていたことになります。六次産業もこの範疇に入ってし
まいます。

 「シビック・アグリカルチャー」の中に次の意味の記述があります。
<米国の巨大アグリビジネス企業の上位10社がアメリカ国内の食品小売販売額の60%以
上を占める。その企業のごく一握りの取締役によって、彼らが築いた世界規模のフード
システムがコントロールされている。>

(私)途方もない支配力の中に我々の食生活が置かれていることが判ります。ふと認識
を新たにしたのですが、かつて私たちは、ヨーロッパのスローライフやスローフードの
ことを聞いた時に、それらを文化運動であるかのように理解していたきらいがあります
ーー私だけでしょうかーーが、EUの反グローバリズムの経済闘争だったんですね。

 この現実を理解することが自給圏構想(スマート・テロワール)を理解する入り口だ
と思います。グローバリズムの呪縛から抜け出すには、上述の2冊の本は必読だと認識
し直しました。

2.グローバリズムへの疑義は2つに大別できる。1つは、グローバル化に対抗して 
「国産」の重要性を高らかに叫ぶタイプ。2つめは、ローカルフードシステムや地域自給
圏の構築(ローカリゼーション) を訴えるものである。

後者からみれば、農業のモノカルチャー化・地域自給圏の解体は、最初は食のナショナ
ル化によ って始まり、それがグローバル化に引き継がれたに過ぎない。東京のマーケッ
ト、全国市場への参入だけを念頭にお いた特産品開発、ツーリズム振興、ブランド化と
いった「改革」は、小さな金魚鉢のなかで過剰に生息する金魚が限られ た水草や酸素を
めぐって競争しているようなものである。

・・・こうした政策は「持続可能な発展」とも、「内発的発展」ともまったく次元が違
う話である。過去数十年、中央 の政治家、官僚、識者が考案し、全国画一的に展開され
てきた処方箋の多くはまさにこれであった。

 (私)日本は車や電気・電子製品などの工業製品を全世界に売りまくって経済成長して
きました。農業を犠牲にしたという負の側面はあったものの、工業ではグローバリズム
の恩恵を受けてきた訳ですから、工業立国の政策に立つ限りはグローバリズムからは抜
け出せないということでしょうか。

 「スマートテロワール」と「シビック・アグリカルチャー」が示しているのは、時代の変化への対応です。先進国は既に農業国になっていると言い、農業も巨大企業農業か
ら「シビック・アグリカルチャー」への変貌が始まっている、食と農を地域にとりも
どす
」のだと説いています。

3.「スマートテロワール」の担い手(3つありますが、1つだけ引用します)
<シビック・ファーマーである。これは市民菜園で趣味の畑仕事をする人でもなければ、
市民運動にかかわる農民 という意味でもない。私的利潤最大化のノウハウに長け、合理
的経済人に特化した「プロフェッショナル」な経営者でも ない。もちろん一定の経営感
覚は必須である。

トーマス・ライソンによれば、地域の公益と持続可能な発展に自覚的で、 地域の問題解
決能力の一角を形成するような人材およびそれら人材のアソシエーション的な結びつき
が、アメリカの 文脈で考えられるシビック・ファーマーである。

農家に限らず、お上への依存が強く、自律市民的な公益・公共的センス に欠ける日本社
会において、シビック・ファーマー的な人的資源がどれだけいるのか。予断は許さない
が、日本各地を くまなく歩いてこられた松尾さんは手応えを感じているに違いない。>

(私)「シビック・アグリカルチャー」の中に持続可能な農業の特徴の一つとして次の
ように書かれています。

<農業とはビジネスであると同時に生き方でもある。>

(私)上に「市民菜園で趣味の畑仕事をする人でもなければ」とありますが、この言葉
と合わせて解釈すると、ビジネスとしてやることがベースになっていると思います。今の
日本は企業年金をもらっている元気な退職者が多いので健康と実益を兼ねて趣味的に農作
業をしている人が多くいますが、それは「シビック・アグリカルチャー」の対象ではない
ようです。もちろんそれが悪いという訳ではなく、結構なことだと思います。
「スマートテロワール」でも同様だと思います。

 クドクドと長くなってしまいましたが、非常に重要なことであり、この解釈が理解でき
ないと先に進めないと強く感じましたので・・。
 抜粋を読んだだけでは意味がとれないかも知れません。下記をお読みください。

「常識」への疑義と「革命」の担い手 松尾雅彦著『スマート・テロワール』によせて

ーーー「世界幸福度ランキング」、日本は51位だった
 このデータ鵜呑みにして良いのかどうか迷うところですが、それを承知の上で読みま
しょう。

<[ニューヨーク 20日 ロイター] 国連と米コロンビア大学が設立した「持続可能な
開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」と同大学地球研究所は20日、最新の
「世界幸福度報告書2017」を発表した。・・・

・・・このほか、ドイツは16位、英国は19位、フランスは31位、米国は1ランク下がっ
14位だった。日本は51位、シンガポールが26位、タイが32位、台湾が33位などとな
った。・・・>
「世界幸福度ランキング」、日本は51位だった
http://toyokeizai.net/articles/-/164020

(私)経済力と幸福度が釣り合いがとれていないのが問題ですね。因みに、日本の一人
当たり国民所得は第22位です。このギャップの大きな原因は、”まちづくり”と農業、つ
まり住宅価値の大毀損と農業政策の拙さにあると考えています。

ーーー住宅・まちづくり研究のことなら、「グローバル研修企画」

 私が長年お世話になっている方です。戸谷先生は”まちづくり”の恩師です。

 今秋、素敵なスウェーデン・フィンランド住宅視察ツアーが計画されています。この
会社は、住宅生産性研究会(理事長:戸谷英世)と組んでプロデュースしています。下記
ホームページに情報が満載しています。読むだけでも楽しいです。

グローバル研修企画
http://www.hgkk.co.jp

★フッターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー★

「スマート・テロワール : 農村消滅論からの大転換」を読んで
http://shinshumachidukuri.blogspot.jp/2015/07/blog-post_9.html

農楽しながら「”田舎暮らし”コミュニティ」を創る
(月刊『ザ・フナイ』より)
http://shinshumachidukuri.blogspot.jp/2014/11/blog-post.html

無農薬玄(白)米の販売
http://daylanbo.blogspot.jp/2013/11/blog-post.html

農楽のすすめ!
http://tateshinadayori2.blogspot.jp/2011/08/blog-post_26.html

”田舎暮らし”動画がYoutubeに300本以上
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メルマガ「蓼科便り」のアーカイブス

http://tateshinadayori2.blogspot.com/
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